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見えるものは見える

見えるものは見える。
レビー小体型認知症に伴う「幻視」は、見えないものが見える症状だが、ここでの話は幻視ではない。

誰もがそう見える「錯覚」について。

一端のグラフィックデザイナーであれば、知っていて当然だが、たとえば下図のような例。
長方形でも正方形でも、楕円・正円もそうだが、上下中央に文字を配置する。
そうすると、若干文字が下がり気味に見えてしまう(A)。
だから、冊子などの裏表紙には、社名あるいはロゴマークを掲載するケースが少なくないが、正確に上下中央に置いてはいけない。少しだけ上部に持ち上げてあげるのだ(B)。

他にも、こうした「あるある」は少なくない。
このように、人間の目は精密なようで、多くの錯覚で成り立っているのだ。

それだから、デザインというものは、まずはいったん数値的に正確な配置を試みた後、見た目を適度に修正・調整していくことが求められる。
その意味でデザインは、ミリ単位という絶対値に気を配る一方、人間の視覚のポンコツな側面も大事にする、そんな仕事に他ならない。

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